アーチェリーの弓をクルマに例えたら
アーチェリー競技における道具って、モータースポーツにおけるクルマに似ていると思いませんか?実際、エヌ・プロダクツがニシザワ時代から使い続けてきた「FORMULA」の名称をはじめ、アーチェリー用品の名称にはクルマ関連用語が度々出てきます。というわけで、アーチェリーの弓をクルマに例えたら。クルマに興味がない人にとっては却ってわかりにくいかもしれませんが、道具選びの参考(?)にどうぞ。
ハンドル(ライザー)
ずばりボディ/シャシー(フレーム)でしょう。クルマを選ぶとき、何を重視しますか?カタチや色でしょうか。ハンドルも同じです。好きな色・デザインを選んでください。ただ、競技として考えた場合、クルマと同じく重要なファクターになるのが「重量」と「剛性」です。重量は軽い方が有利です(弓全体で言えば軽ければいいというわけではありませんが、ハンドルが軽ければ、限られた総重量の中で重量配分を自在に調整できるからです)。クルマの場合、街乗りでボディ剛性の過不足を感じることはまずないですよね。通常のポンドの弓であれば剛性を気にする必要はありませんが、特に高いポンドを引きたい場合は剛性も考慮に入れましょう。
リム
矢を飛ばすエネルギーを生み出すところ、クルマでいうとエンジンです。ポンド数は言わば排気量でしょうか。ポンド数が高ければ当然矢もよく飛びますが、同じ排気量のエンジンでも出力や吹け上がりが違うように、同じポンド数でもモデルによって引きのスムーズさや矢飛びはまるで違います。メーカーの技術力の差が最も出るパーツですので、妥協せずに選びましょう。それから、アクセルペダルを踏めば回るエンジンとは違い、リムは自分の力で引かなければなりません。自分の体力に合った強さを選びましょう。「周りの人が○○ポンドだから…」などと一律に決めてしまうのはNGです。
ストリング
ストリングは、単純にリムの力を矢に伝える、クルマでいうトランスミッションやドライブシャフトあたりでしょう。リカーブボウでは変速しませんが。ストリングのストランド数(太さ)やストリングハイト(ブレースハイト)を変更すると、矢飛びに大きく影響します。弓のサイズ・ポンド数によって適正ストリングハイトやストランド数はだいたい決まっていますが、リムの個体差や差込角度(リムボルトの位置)によっても若干異なります。自分にとってベストな位置を見つけましょう。
リムボルト
リムボルトを回転させるとリムの差込角度が変わり、ポンドが変わりますが、これはエンジンの排気量が変わるというより、使用する回転数域が変わるのに近いと思います。エンジンの性能が最もよく引き出せる回転数域がだいたい決まっているように、いたずらにリムボルトを上下しても、リムの性能を生かしきれなくなる場合があります。ストリングハイトと同じく、リムが最も生きる位置を基本に考えましょう。もちろん、弓のサイズが自分の引き尺に合っていることが大前提です。
スタビライザー
そのまんまスタビライザー、でもいいですが、スポイラー等の空力装置と考えてみましょう。時速200km/h超というような世界では、空気の流れを制御することは非常に重要な要素ですが、最近ではATのミニバンでも、ファッション目的のエアロパーツが一般化していますね。アーチェリーにおいても色々な性能を謳うスタビライザーが存在しますが、初心者はスタビライザーなど付いていなくても構いませんし、中級者でも適当な棒が付いていれば、性能など考えなくてもあまり差が出ません。本当に高得点を狙うことを考えたとき初めて、スタビライザーの「スタビライザー(安定装置)」としての性能を考える必要が出てきます。
ただ、アーチェリーのスタビライザーには、安定装置としての役割の他に、振動吸収装置としての役割も求められています。弓自体のチューニングが適正であればそれほど問題になりませんが、あまり極端なセッティングの場合、不快な振動が手元に残ったりするばかりでなく、的中精度にも悪影響が出る場合があります。ファッション目的のエアロパーツが空力性能を悪化させることがあるのと同じです。
サイト
クルマでは的を狙ったりしませんので例えようがないですが、無理矢理例えるとレブカウンター(タコメーター)等の計器類あたりでしょうか。クルマを運転する際、「キッチリ8750回転でシフトアップする!」と意識するより、状況に応じてスムーズにギアをつないでいくことの方が大事ですよね。アーチェリーでも、「サイトピンを的のど真ん中にピッタリ固定する!」と考えるより、シューティングの流れを重視して、ぼんやり狙うのがいいと、個人的には思います。
ただし、ぼんやり狙うにしてもシビアに狙うにしても、毎回正確な位置にサイトピンがあってくれないと困ります。サイトの性能は正確性(再現性)が第一です。堅牢性もその一部です。その上で、調整のしやすさや軽さといった要素が加味されます。
レスト/プランジャー
クルマでいうと足回り、サスペンションです。モータースポーツではクルマの挙動を左右する重要な部分です。プランジャーの位置・硬さは、チューニングを煮詰めるのが一番難しい部分ですが、個々人のセッティングに合わせてしっかり調整する必要があります。そういえばプランジャーにもダンパーにも定番ブランドというものがありますね。製品によって機能性(使いやすさ)の良し悪しはありますが、スムーズに動いて、しっかり調整ができれば、プランジャーはシンプルなものでも性能は変わりません。
レストはサスペンションアームみたいなものです。毎回同じように矢を保持できれば問題ありません。しかしアーチェリーの場合、「クリアランス」という要素が加わります。チューニングが万全であればいいのですが、ちょっとしたミスのとき、飛び出した矢(ベイン)がレストに強く当たったりすると的中が大きく外れる原因になります。そのため、「当たってもすぐに引っ込む」等の機能が「性能」の一部として語られます。
クリッカー
昔はなかったのに、今は上級者の必須アイテムとなったクリッカー。「クリッカーがないと射てない」という人も多いでしょう。単なる板切れに過ぎないのですが、これはクルマで言うと電子制御デバイスみたいなものです(ABSとかTCS?モータースポーツでは禁止されている場合も多いようですが)。クリッカーほど的中精度に大きく貢献するものはありませんが、頼りすぎるのも危険です。「クリッカーに使われる」のではなく、「クリッカーを使いこなす」ことを念頭に練習しましょう。
道具に性能の差があるとすれば、厚さ(テンション)を選べることと、シューティング中に位置がずれないことでしょう。
グリップ
弓本体の中で唯一、直接触れる場所、いわばシートです。クルマを運転するときシートの角度を調整しない人はいないでしょう。自分の感覚に合ったグリップ形状のものを選ぶことは非常に重要です。もちろん他のグリップに交換したり、加工したりもできますが、加工にはそれなりの技術が必要です。パテを盛ったり削ったりする場合、標準グリップは別に持っておいて、時々基本に戻ってみるのもいいかもしれません。
アロー(矢)
これはずばりタイヤです。クルマの構成パーツの中で唯一路面に接してタイムを刻むのがタイヤであるように、実際に的へ飛んでいって得点に結びつくのは他ならぬ矢です。タイヤがグリップ性能を求められるように、アローシャフトに求められるのは飛翔の安定性です。基本的にアローシャフトは軽い方が有利です。矢が山なりではなく直線に近い軌道を描くため、飛翔時間を短く抑え外的要因の影響を軽減することが出来るためです。非常に強いポンドを引くトップアーチャーであれば話は別ですが、一般のアーチャーではこの傾向が強く出ます。また、忘れてはならないのが、タイヤと同じくアローシャフトも消耗品だということです。タイヤと同じく磨耗もしますし、時間とともに劣化していきます。キズのあるシャフトや古いシャフトを使い続けると、不意に破損したりした場合に大変危険です。アローはこまめにチェックしましょう。
ホイールが歪んでいたりバランスが狂っているとステアリングにブレが出ますが、ポイントやノックが歪んでいると、的中に大きく影響が出ます。装着は慎重に行う必要があります。
※ クルマの専門知識は全くありませんので、おかしな部分があったら教えてください。

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